男性不調外来開設への思い
更年期障害の外来といえば、女性のための専門外来を容易に想像することができます。
また、総合病院のような大きな医療機関から近くのクリニックまで、気軽に受診することができます。
反対に男性に特化した「男性更年期」の専門外来またはメンズヘルス外来の数は、まだまだ少なく、さらに普及活動が進んでいないことから認知度が低いのが実状です。
そのため、「男性更年期障害」を疑って受診する患者さんがとても少ないことに気づきました。
男性更年期障害の原因には男性ホルモンの低下があり、つまり、テストステロンの量が関連しているといわれています。
テストステロンは一般的に20歳台にピークに達しその後徐々に減っていきますが、その減少が強いと更年期障害を起こしやすくなります。男性の更年期障害による症状は多種多様で主な症状があります。当院では男性不調を4つのカテゴリーで分けています。
気力
落胆、抑うつ、イライラ、不安、自己中心的、神経質、不安、気分が落ち込む、短気で怒りっぽくなった、発汗、ほてり、めまい、睡眠障害、夜間に目が覚めて眠れない
体力
筋力の低下・筋肉痛、疲労感、筋肉量の減少、内臓脂肪の増加、皮膚がたるむ、シワが出てきた、骨が脆くなった、関節痛、筋肉痛、手足の冷え
知力
興味・意欲の減退(仕事に燃えない)、パフォーマンスの低下、記憶注意力低下、集中力・判断力・記憶力が低下した、疲れやすい
性力
性欲低下、勃起障害、射精感消失、頻尿、性欲が低下した、朝の勃起が見られなくなった
男性不調外来では、問診以外にも採血検査を重要視しています。
正確な値を求めるためには、患者さん自身にもご協力を必要とします。
• 正確な男性ホルモン値を測定するためには、採血を午前中に行わなくてはなりません。
(採血のみの場合は火・木曜〜土曜日12:00まで受付、日曜日は実施していません)
• 前日の暴飲・暴食・飲酒は避けてください。
• 十分な睡眠をお取りください。
• 心臓病・高血圧のお薬を服用されている方は、当日7:00までに少量の水で服用後、採血を受けてください。
• 糖尿病の薬やインシュリンの投与が必要な方、その他の薬を常用されている方は前もって主治医にご相談ください。
男性ホルモンの値によって、治療方針が異なります。
・軽度の方
内服治療を行います。
→サプリメントを中心とする投薬等を行います。
→症状に合わせた治療を検討します(ED治療、AGA治療など)
・中等度の方
→サプリメント・内服による治療
→希望がございましたら顕著な中等症以上の方は、男性ホルモンの補充療法を行っています。
・重度
→サプリメント・内服による治療
→男性ホルモンの補充療法を積極的に行っています。
男性ホルモン補充により、前立腺癌、乳癌、前立腺肥大症を発症させることはありませんが
Dihydrotestosteroneや Estradiolが上昇することで、増悪させることが報告されています。
それゆえ、前立腺癌・乳癌、高度排尿障害の前立腺肥大症では禁忌となっています。
肝機能検査や前立腺のチェックを治療前と治療中に検査を定期的に行う必要があります。
また、男性ホルモン補充療法中に赤血球増多症をきたすことがあり一般血液検査でチェックする必要があります。
睡眠時無呼吸症候群の副作用が報告されているため、いびきや肥満などにも注意が必要です。
ホルモン療法が施行できない、あるいは施行時に注意を要する疾患があります。
①今後も妊娠または妊娠を希望する場合(精子の数が減少する報告があるため)
②血栓性静脈炎や肺塞栓症およびその既往がある場合
③心臓疾患、腎臓疾患およびその既往がある場合
④肝臓障害のある場合
⑤癌の診断がある場合
⑥抗凝固剤を服用している場合
⑦てんかんのある場合
⑧糖尿病患者、血糖下降剤を服用している場合
ホルモン療法を施行中、望ましくない副作用の発現が認められる可能性があるので、定期的な検査が必要です。
*異常値が出た場合、中止することがあり、ご希望に添えないことがあります。
女性と同じように男性にも更年期障害があります。
しかし、あまり知られていないため、
更年期症状に苦しんでいても周りの人からは「さぼっている」「やる気がない」等に見られてしまい、
病気以外のことでも苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。
内服治療・ホルモン補充療によって男性ホルモン値の上昇により、活力が戻ってくる患者さんはいます。
当院ではテストステロン補充を始めたからと言って、必ずしも 一生涯、継続し続けなければならないと考えていません。
しかしながら、中止後、治療の再開を希望する患者さんが存在することも事実であり、
治療の継続についても、しっかり話し合っていきましょう。
当院では、男性不調外来では、男性が充実した日々を送るための治療に取り組んでいます。
これらの副作用は個人によって異なり、全ての人が経験するわけではありません。ただし、副作用が現れた場合は当院にご連絡ください。